台湾滞在二日目の朝、前日からの長旅と怒涛のミッションで疲れがどっと溜まっているはずなのに、時差ぼけのせいで朝5時という異常な時間に目が覚めてしまいました。二度寝を試みるも全く眠れず、諦めてこの有り余る覚醒パワーを有効活用することに。こうして私は、眠っている故郷の静かな表情を見ようと、人影のない早朝の近所を散歩する「淡水潜入ミッション」へと繰り出したのでした。
動画に収めた早朝の川沿いのウォーキングコースは、まさに極上の癒やし空間でした。のどかな風景が広がる中、道中には台湾らしい朱色の寺院や、きれいに整備された公園が点在しており、穏やかな時間が流れています。新鮮な早朝の空気を吸い込みながら歩くだけで、この淡水という街の静かで美しい日常が、35年ぶりに帰ってきた私の心にじんわりと染み渡り、深い安らぎを感じることができました。
早朝散歩から戻った後、「あんなにたくさんのバイクが走っているのに、路上に停まっているのをあまり見ない」という疑問が浮かびました。その答えとして案内されたのは、マンションの地下にあるバイク専用の駐車場。そこにはアメリカでは見たこともない、何十台ものバイクがきれいに整列した専用スペースが広がっていました。しかも、このマンションでは各住戸にバイク1台分の駐車スペースが必ず付帯し、こうした造りが現在の台湾の建物では主流になっているとのこと。台湾のバイク文化を支える、その驚くべき都市設計の進化を目の当たりにし、35年前とは全く違う故郷の姿を実感しました。
いよいよ台湾滞在二日目のメインミッション、台北市の中心部へ向かうことになりました。現在滞在している淡水は、台北MRTの路線図における赤色(レッドライン)の最北端の終点にあたるため、ここから乗車すれば、台北の活気溢れる中心部まで乗り換えなしで一直線です。新鮮な郊外の空気から一転、古き記憶と現代の活気が渦巻く都市の中心部へ向けて、私たちはレッドライン特急に乗り込み、「文明開化の旅」へと出発しました。
MRTを中山駅で降り、台北の中心地へと足を踏み入れると、そこは「台北でもっともオシャレな町」の異名に違わぬ空間でした。通りには今風の洗練されたお店が軒を連ね、街全体が多くの人で賑わい、圧倒的な活気に満ちています。淡水の穏やかさとは一転した、この現代的なエネルギーと高いファッション性を目の当たりにし、台北の目覚ましい進化を強烈に実感しました。
「中山」エリアには、予約が必要なカフェだけでなく、思わず立ち寄りたくなるような魅力的なレストランやカフェが本当にたくさんありました。尽きることのない好奇心と、このオシャレな街をもっと散策したいという強い未練がありましたが、この日はすでにお昼のレストランを予約してしまっていたため、中山エリアの本格的な散策はまた後日に持ち越すことに。後ろ髪を引かれる思いでこの魅惑の地を後にし、私たちは予約済みの「ランチミッション」へと向かいました。
そこから向かったのは、予約していた超人気店「鼎泰豐(ディンタイフォン) 南西店」。店内は世界中からの観光客で大変な賑わいでしたが、お目当ての名物・小籠包は、台湾の物価からすると高めの設定ながら、一口食べればその美味しさに心から納得しました。小籠包はもちろん、どの料理も本当に美味しく、さらにスタッフのサービスも最高レベルで、鼎泰豐はただの食事ではなく「至福の体験」でした。私たちは大満足のランチで、台北の活力を胃袋から満タンにチャージしました。
Din Tai Fung Mitsukoshi Nanxi Restaurant
鼎泰豐 南西店
ところが台北駅に到着した瞬間、目の前には「このものすごい人だかりは一体!?」と絶句する光景が広がっていました。広大なターミナル駅のフロアが、なんとポケモンの大規模イベントの参加者によって完全に埋め尽くされていたのです。駅は一瞬にして「熱狂のトレーナーたちの聖地」と化し、その尋常ではない賑わいとエネルギーは、圧巻というか、ある意味で非常に台湾らしい歓迎の洗礼だと感じさせられました。
台北駅で無事にチケットを買い終え、夜の予定までの時間に余裕ができたため、私たちはその空いた時間を利用して、台北の若者たちに人気のスポットだという「西門(シーメン)」へ足を延ばしてみることにしました。ここは日本の渋谷や原宿にも例えられる最新トレンドの発信地であり、私たちはこの若者の活気が渦巻くエリアへ向かい、台北の「今」の文化とエネルギーを体感することにしました。
ここまで敢行した、台北の中心部を巡る様子は、こちらの動画で詳しくご覧いただけます。「中山」の洗練されたオシャレな街並みや、「台北駅」で遭遇した熱狂的なポケモンイベント、そして若者の活気が渦巻く「西門」での散策など、台北の「今」の姿とエネルギーを凝縮した内容となっています。静寂の淡水から一転した、刺激的な台北の姿をぜひご覧ください。
夜の待ち合わせの時間が近づいてきたため、活気あふれる「西門」の街を後にすることにしました。そのまま次の目的地へ向かうべく、賑やかな街並みを観光がてら歩き、一番最寄りのMRTレッドラインの駅「台大醫院(台大病院)」まで移動。昼の喧騒が夜の落ち着いた活気に変わる台北の表情を楽しみながら、次の予定へと向かうための準備を整えました。
西門から台大醫院駅まで歩いていると、突然、赤レンガ造りの荘厳な建物が目の前に現れました。その建物こそ、台湾の総統(大統領)が執務を行うオフィス、「總統府」です。この建物は、日本統治時代に建てられたものが現在もそのまま使われており、その重厚な佇まいからは台湾の歴史の重みと、時の流れを超えた威厳を感じさせられました。夜の待ち合わせに向かう道中で、台湾の心臓部が持つ強烈な歴史的な存在感を目の当たりにした瞬間でした。
台湾の心臓部である総統府を後にし、MRTレッドラインに乗り込み、二駅先の「雙連駅」で下車しました。そこから目的地までは徒歩でおよそ10分。夜の落ち着いた雰囲気に変わり始めた街を、私たちは慎重に進みます。この先に佇む場所こそ、怒涛の一日を締めくくる今夜の待ち合わせ場所。疲労を忘れさせるほどの期待感を抱きながら、私は最後の目的地と向かいました。
夜の最終目的地は、台湾の夜のお楽しみの代名詞、有名な「寧夏夜市」でした。熱気あふれる屋台の灯りの下で、そこで待ち合わせていたのは、ニューヨークの学生時代を共に過ごした盟友、TonyとJackson!実に十数年ぶりとなる旧友との再会は、夜市の喧騒がまるで感動のBGMのように響く中、実現しました。台湾で、最高の夜のグルメと共に、時を超えた熱い友情を再確認する至福の瞬間でした。
Ningxia Night Market
寧夏夜市
十数年ぶりに再会した旧友たちと熱狂の「寧夏夜市」に繰り出しましたが、目の前には食欲をそそる屋台グルメが溢れているにもかかわらず、時差ぼけと一日中歩き回った疲労がピークに達しており、私の食欲ゲージは完全にゼロでした。最高の舞台で最高のグルメに挑めなかったことは非常に残念でしたが、この無念を胸に、必ずや体調を万全にして、後日この夜市に「リベンジマッチ」を挑むことを誓いました。
夜市をほどほどに切り上げ、私たちはゆっくりと積もる話を分かち合うため、近場のカフェへと移動しました。テーブルを囲み、始まるのは十数年分の空白を埋める感動の語らい。懐かしい学生時代の昔話はもちろん、お互いの人生の近況まで話に花が咲き、疲労も時差ボケも忘れてしまうほど、再会を喜び合う時間は本当に楽しく、あっという間に過ぎ去っていきました。
残念ながら、この時は疲労と時差ぼけで食欲不振という「食の敗北」を喫したため、グルメへの挑戦はまた後日に持ち越しとなりましたが、旧友との感動的な再会という最高の思い出が詰まった、熱気あふれる「夜市視察ミッション」の全貌を、ぜひ動画でご確認ください。
旧友たちとの話に夢中になり、ふと時計を見て「ヤバい!」と焦りました。気づけば、淡水駅からマンションへ帰るシャトルバスはすでに運行を終了している時間だったのです。最高の友情が招いた帰宅ミッション最大の危機でしたが、すぐに「緊急脱出ルート」を発動。一駅前の「紅樹林駅」まで移動し、そこから出ている深海ライトレール(LRT)を利用して帰宅することにしました。最終バスを逃したおかげで、思いがけず夜の台北郊外を走る新しい交通手段での移動を体験することになりました。
夜の緊急ルートとして台湾で初めて深海ライトレール(LRT)に乗車しましたが、乗り方はすでに慣れていたMRT(地下鉄)とほとんど同じだったため、戸惑うことなくスムーズに乗りこなすことができました。このLRTとMRTの共通性により、長旅の疲れがピークに達している状態でも、問題なく乗車できる台湾の交通システムの親切設計に感心しました。こうして、私は台湾の交通網を完全に手の内に入れた喜びを感じながら、無事に帰路についたのでした。
LRTを降りる直前、ふと確認したスマートウォッチの歩数を見て、私は自分の目を疑いました。そこに表示されていたのは、なんと「4万歩」超えという驚異的な記録。これはほぼフルマラソンを走ったのと同じ距離であり、どうりで意識が朦朧としていたわけだと、疲労の真の正体が「運動過多」だったことを悟りました。こうして、台北の中心部を文字通り縦横無尽に歩き回るという、私の人生最高記録を樹立した台湾二日目は、偉業達成の興奮と共に幕を閉じたのでした。















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