2025年8月27日水曜日

ニューヨークの廃墟シリーズ: Randall's Island Golf Center ランドルズアイランド・ゴルフ練習場




ニューヨーク市におけるリクリエーションの象徴とも言える「Randall's Island Golf Center(ランドールズ・アイランド・ゴルフセンター)」は、1993年にAmerican Golf Corporationによってオープンしました。これは、ランドールズ島をスポーツとレジャーの拠点として活性化させる大きな計画の一環でした。

オープン当初、この施設にはゴルフ練習場をはじめ、プロショップ、バッティングセンター、そしてミニチュアゴルフコースまで整備され、幅広い世代に親しまれる複合的なスポーツ施設として人気を集めました。

その後2008年には、経営難に陥った運営をNorth Shore Golf Groupが引き継ぎ、約50万ドルを投じた大規模改修を実施。クラブハウスのリニューアル、暖房付き打席の導入、そしてスタジアム仕様の照明設備による夜間利用の拡充などが行われ、施設は再び輝きを取り戻しました。

さらに2018年、ニューヨーク市当局はDrive Shack Incに再建計画を発注。既存のゴルフセンターを取り壊し、複数階建ての娯楽・リクリエーション複合施設として再生するという壮大なプロジェクトが打ち出されました。期待は大きく膨らみましたが、その後の展開は誰もが予想しなかった方向へと進んでいきます。


時が止まったゴルフセンター ― 廃墟と化した現在の姿


2018年の閉鎖を境に、Randall's Island Golf Centerはまるで時計の針が止まったかのような状態に置かれています。再建プロジェクトは設計段階で停滞し、さらに2020年のパンデミックによって建設業界全体が大きな打撃を受けたことで計画は大幅に遅延。2023年夏の着工予定も実現せず、2025年現在も再開発の具体的なスケジュールは明らかになっていません。


かつて賑わいを見せたゴルフ打席やクラブハウスは、今では荒れ果てたまま放置され、草木が侵入し始めています。風に揺れるフェンスの軋む音や、割れたガラス越しに差し込む光は、まるで廃墟探訪をしているかのような異様な雰囲気を漂わせています。


この静けさは、かつての賑わいを知る人々にとっては強烈なコントラストとなり、都市再開発の光と影を象徴する光景といえるでしょう。ニューヨークのど真ん中にありながら、取り残されたような「空白の時間」。それが今のRandall's Island Golf Centerです。


ギャラリー


ゴルフの練習台が置かれていたところ

未だに放置されている、ゴルフ練習台

練習台から見た風景

ゴルフ練習場のクラブハウス


かつてにぎわいを見せていた、バーカウンター

野球のバッティングセンターを放置された状態

ゴルフ練習台の入り口

2階練習場へとつなぐ階段

2階の練習場


2階の練習台からみた風景

2025年6月20日金曜日

Tweed Tunnels(トウィード・トンネル): ニューヨークの廃墟シリーズ

 ハドソンバレー沿いにあるClausland Mountainにとある建造物があるという情報を耳にして、登山をほぼしない私が「ちょっくら行ってみるか」と軽い気持ちで山に向かいました。

あまり使われていないようなトレイルの入り口

入口付近はまだ寂れた感じのトレイルのようだ

ところが、いざ着いてみると、その山のハイキングトレイルはすでに閉鎖済み。しかも例の建造物はそのトレイルから外れた奥地にあるらしい。。。仕方なく、かすかに残る獣道を頼りに検索スタート。

倒れた木が獣道の行く手を阻む

徐々に獣道も薄れていくようなエリアを進む

木々に囲まれた獣道を進んで行くことに。。。

でも正直、ナメてました。水も食料も持たず、携帯も圏外。そんな状態で2時間以上、山の中をさまよい続け、汗だく、ヘトヘト、ほぼ迷子。もう諦めて帰ろうかと下山を考えたその時ーーーー


明らかに人工的に加工され、つまれている石


倒れた木の横に謎の人工的なモノを発見

何か分からないが、あきらかに最近使われてた


謎のタイヤが木にかけられていた

目の前に突如現れた、人工的な構造物の数々!「もしかして近いかも?!」と最後の気力を振り絞り、あたりを探し回ったら。。。

ついに例の建造物を発見!!


要塞化された後が見られるTweed Tunnels

Tweed Tunnels

ハドソンバレー沿い、深い森におおわれたClausland Mountainの奥地に、人知れず存在する「Tweed Tunnels」。この地は第一次世界大戦中、アメリカ軍がヨーロッパ戦線での塹壕戦に備えた極秘の訓練場として築かれた。地中に張り巡らされた迷路のようなトンネル、苔むした塹壕、崩れかけた射撃台、そしてひんやりとした地下壕ーー100年以上の時を経た今も、そのままの姿で静かに残されている。

塹壕戦を想定して作られた要塞化されている壁


武器は弾薬の保管庫として利用された、バンカー


一面の要塞を大きく囲むように作られた壁


木の幹に侵食されているトンネルへの入り口


トンネルはいくつかの場所で崩れているのが見れる


射撃の練習台として使われたであろう、発射台の数々

だが、この場所はわずか3年で閉鎖された後、決して再利用されることはなかった。やがて若者たちがスリルを求めて集う場所となり、壁一面に落書きが広がったが、次第にこの地はただの廃墟ではなくなっていた。

さらに続く塹壕を想定されて作られた壁


塹壕の壁の上からみた、バンカー


地下壕のトンネルが通っている場所も発見


トンネルが崩れ、トンネル内がむき出しになっている個所もある


木々の侵食で隠されている、バンカー


現在はバンカーの中に入ることも可能

バンカー内は多くの落書きがあるものの、特に汚されているような感じはなかった


いつしか、「死」がこの地に巣を作った。ギャングが痛いを隠す場所として選び、不可解な殺人や自殺が後を絶たず。そしてついには「Omega Men」と呼ばれるカルト集団の儀式の場と化した。うわべは静寂に包まれているが、地下にはいまもなにかが蠢いているような、異様な気配が漂っている。


壁の下をくぐり抜けると小さな塹壕が見られた


武器と弾薬を保管されてたと思われる小さめのバンカー


大きな壁の塹壕に隣接しているのが分かる


何かの儀式に使われていたと思われる場所


塹壕の壁を一番最後には一番大きいバンカーがある


中は二階建てになっているが、すでに崩れて危険なため外からの撮影のみ


かつて、戦地に送られる兵士たちが恐怖とともに訓練を重ねたこの地には、その時に染みついた絶望と苦悩の記憶が今も渦巻いているのかもしれない。100年の時を超えてもなお、「Tweed Tunnels」は呪われた場所として人々を引き寄せ、そして拒絶している。有機を持たぬ者が近づくべきではないーー。


2025年4月28日月曜日

絵で見る「世界遺産」:慶州歴史地域(Gyeongju Historic Areas)ー 韓国

Woljeonggyo Bridge

**慶州(Gyeongju)**は、韓国・慶尚北道に位置する古代新羅王国(紀元前57年~935年)の首都だった都市で、

**韓国の「屋根のない博物館」**とも呼ばれるほど、都市全体が歴史遺産に溢れています。
2000年に、**慶州歴史地域(Gyeongju Historic Areas)としてユネスコ世界遺産(文化遺産)**に登録されました。


歴史的背景
  • 新羅王国:紀元前57年に建国され、668年に朝鮮半島を統一、935年に滅亡するまで約千年の長い歴史を持つ。

  • 慶州はその首都として栄え、政治・文化・宗教(特に仏教)の中心地だった。

  • 新羅の影響は現在の韓国文化や仏教美術にも大きな影響を与えている。


主な構成遺産と見どころ

  1. 南山地区(Namsan Belt)

    • 仏教彫刻や寺院跡、石塔、仏像が山全体に点在。

    • 南山は山そのものが仏教の世界」とも言われる。

  2. 月城地区(Wolseong Belt)

    • 新羅王宮(月城)があった場所。

    • 世界最古の現存天文台**瞻星台(チョムソンデ)**もこのエリアにある。

  3. 皇龍寺地区(Hwangnyongsa Belt)

    • 新羅最大級の仏教寺院・皇龍寺跡があり、かつては九重塔が建っていた。

    • 近くにある仏国寺も新羅仏教文化を代表する重要寺院(※別途世界遺産登録)。

  4. 大陵苑地区(Daereungwon Belt)

    • **古墳群(王族の墓)**が広がるエリア。

    • 特に「天馬塚」は内部見学ができ、出土した豪華な金製品が展示されている。

  5. 芝岩地区(Hwangnyongsa Belt内に隣接)

    • 重要な仏教遺跡が集中するエリア。

    • 特に美しい石仏が多く残されている。


南山地区(Namsan Belt)


月城地区(Wolseong Belt)


瞻星台(チョムソンデ)

皇龍寺地区(Hwangnyongsa Belt)


大陵苑地区(Daereungwon Belt)


天馬塚


世界遺産としての価値
  • 東アジア古代国家における仏教文化と政治権力の結びつきを示す貴重な遺跡群

  • 1000年にわたる新羅の歴史と、その独自の芸術・建築・都市計画の痕跡

  • 自然景観と一体化した信仰空間(特に南山地区)が独自性を持つ


現在の状況と観光

  • 慶州は観光地としても人気が高く、遺跡散策と自然観光を同時に楽しめる。

  • 市内にはレンタサイクルもあり、自転車で遺跡巡りができる。

  • 春の桜、秋の紅葉など、四季折々の美しさも魅力。


アクセス

  • 所在地:韓国・慶尚北道慶州市

  • 最寄り都市:釜山(プサン)から高速鉄道(KTX)で約30分、ソウルからも新幹線で約2時間


まとめ

慶州は、韓国古代史の心臓部であり、新羅千年の栄光を今に伝える歴史の宝庫です。
石仏、古墳、寺院、天文台、すべてが自然と調和しながら静かに歴史を語りかけてくる場所
韓国文化の源流を深く知ることができる、必見の世界遺産です。