2025年11月13日木曜日

10/19/2025 台湾帰省旅行:三日目・高雄 - Taiwan Homecoming Trip: Day Three Kaohsiung


台湾3日目。いよいよ南へ大移動!……と、気合いだけは十分だったのですが、現実はびっくりするほどサクサクでした。

「台北駅(Taipei Main Station)」から新幹線に乗り込んだ瞬間までは、「よし、高雄までの大冒険が始まるぞ!」なんて気分だったんです。完全にロードムービーの入り口。

ところが――目を閉じて、ちょっとボーッとして、気づけば約2時間弱。体感は15分。下手したら10分。感覚的には、「ちょっと隣町まで牛乳買ってくるわ〜」くらいの軽さで、台湾第2の都市・高雄にワープ完了

距離はしっかりあるはずなのに、移動の記憶がほぼ残らない。これが台湾新幹線の恐ろしさ(=快適さ)なのだと、私は身をもって理解しました。

南国・高雄編、気づいたらもう始まってます。


約2時間の電車旅。その時間を共にする相棒として選ばれたのは、出発前に台北駅で確保した排骨飯。席に座った瞬間、気づきました。これは移動じゃない。排骨飯とのデートだ、と。

車窓の景色が流れるたびに、頭の中では勝手に役割分担が決まっていきます。高雄までの道のり=前菜。排骨飯=本命。

電車が走るほど、箸も進む。のんびりごはんを頬張りながら外を眺めていると、ふと浮かぶ疑問。「……あれ? もしかして観光、もう始まってない?」

目的地に着く前から満足度が高すぎるこの状況。結論として言えるのはただ一つ。移動中に食べるごはん、意外どころか主役級。いや、むしろ優勝。



高雄の「左營駅」に到着すると、なんと40年以上ぶりとなる従兄が迎えに来てくれていました。……とはいえ、ここで正直に白状します。

顔の記憶、ゼロ。「この人、本当に従兄?それとも、ものすごく親切な初対面の方?」と、内心では緊急本人確認フェーズに突入。

しかし大人です。そこはグッと堪えて、再会の空気感を全力で演出。「久しぶり〜!」という言葉に、若干の探りと祈りを込めつつ、自然な流れで従兄の家へ向かうことになりました。

ところが――到着して、再び衝撃。目の前に現れたのは、まさかの高雄・高級マンション
エントランスはピカピカ、空気は上品、雰囲気は完全にセレブゾーン。「……いつの間に?」「40年の間に何が?」頭が状況に追いつく前に、心はすっかりマンションの豪華さに持っていかれていました。

こうして、感動的なはずの40年ぶりの再会は、「従兄=セレブ疑惑」という、まったく予想外の展開で幕を開けたのでした。


マンションのベランダに出て、高雄の街を一望した瞬間――言葉が消えました。正直に言うと、それまでの高雄のイメージは「南の港町、のんびり、ゆったり、時間が流れる系」。

……完全に間違っていました。

眼下に広がるのは、高層ビルが立ち並ぶ力強いスカイラインと、今まさに動いている感が伝わってくる街並み。景色そのものが「どうだ、これが高雄だ」と主張してくる都会感です。

「え、ここまで来てたの?」
「いつの間にこんな進化を?」

驚きと同時に、心の中では思わず深々と一礼。「高雄さん、完全に侮っていました。」

この一望の景色を前に、高雄という街への印象は一気に更新。穏やかな港町どころか、エネルギーに満ちた南台湾の大都市――その第一印象は、想像をはるかに超えるインパクトでした。


今晩予約しているディナーまで、少しだけ時間に余裕があったため、従姉に連れられて向かったのは――足裏マッサージ。実はこれ、人生初体験。正直なところ「痛いって聞くけど大丈夫か……?」と、若干の覚悟を決めながら椅子に座りました。

ところが施術が始まった瞬間、すべてを悟ります。その指先、まるで昨日の4万歩をGPSで追跡してきたかのように、疲労が溜まりきったポイントを一点突破。

「そこです!そこに全部あります!」心の中では叫びながらも、感覚は痛いのか気持ちいいのか、もはや判別不能。悶絶と快感の狭間を行ったり来たりする、不思議すぎる時間が流れていきます。

そして気づけば、全身の力がスーッと抜け、完全脱力。初体験だったはずなのに、最後には
「足裏マッサージって……すごい……」と、誰にともなく感心している自分がいました。

40,000歩で限界を迎えていた体が、静かに救われた瞬間。それはまさに、南台湾で起きた小さな奇跡のような時間だったのです。

河堤泡脚會館脚底按摩辛亥店
No. 117, Xinhai Rd, Zuoying District, Kaohsiung City, Taiwan 813


そして迎えたディナーは、高雄でも「予約困難」と噂される人気店、「享鴨 高雄裕誠店」
店名からして北京ダック推しなのは明らかで、入店した時点ですでに期待値は高めに設定されていました。

そして、その北京ダック。ひと口食べた瞬間、すべてを理解します。パリッとした皮、旨みを逃さないジューシーな肉。「ああ、これは看板を背負ってますね」と、納得せざるを得ない完成度でした。

……が、本当の驚きはここから。


次々と運ばれてくる料理が、どれも手を抜く気配ゼロ。脇役で済ませるつもりが一切ない、全員主役クラスの布陣です。気づけば、北京ダックだけでなく他の料理にも感心しっぱなし。「え、これも強い」「こっちも普通に主役では?」と、驚きが更新され続ける展開に。

こうしてディナーは、最初から最後まで満足感に包まれた時間となりました。北京ダックの名店、という枠を軽々と超えてくる実力。この一食で、高雄の“食の底力”をしっかり叩き込まれた夜だったのです。

享鴨 高雄裕誠店

813, Taiwan, Kaohsiung City, Zuoying District, Yucheng Rd, 448號2樓


後から知って、思わず二度見しました。「享鴨 高雄裕誠店」のGoogleレビュー数、まさかの2万件超え。そして評価は、信じがたいことに**★4.9**。

……ほぼ満点じゃないですか。これだけの件数でこの数字を叩き出すのは、もはや偶然でも忖度でもなく、実力の証明。あの予約の取りづらさも、店内の熱気も、「そりゃそうだよね」と素直にうなずくしかありませんでした。

実際にあのディナーを体験した身として振り返ると、このレーティングはもはや“評価”というより、集団による表彰に近い存在。「よくぞここまでやりました」と、世界中の胃袋から正式に認定された感じです。

数字を見て驚き、記憶を辿って完全に納得。享鴨は、高雄の夜にしっかり爪痕を残す、文句なしの名店でした。


従兄妹たちとの楽しいディナーを終え、この日の宿として辿り着いたのは**「城市商旅 高雄駁二館」。実はこの日、高雄ではまさかのBLACKPINKコンサート開催日**。その影響で、街中のホテルはほぼ満室という非常事態に陥っていました。

空室を求めて彷徨った末、残っていたのはやや価格帯高めのホテルのみ。「これは完全にコンサート特需に巻き込まれたな……」と思いつつ確認してみると、宿泊費はおよそ75ドル。……あれ?思ったより全然いける。

結果的に、BLACKPINKとは一切関係ないにもかかわらず、そのビッグイベントの余波を受ける形で、予定外のプチランクアップ宿泊が決定。自ら望んだわけでも、ファンでもないのに、なぜか待遇だけは良くなりました。

こうして高雄の夜は、音楽の熱狂を横目に、静かで快適なホテルで締めくくられることに。
旅には時々、こんな“巻き込まれ型ラッキー”があるから面白いのです。

City Suites Kaohsiung Pier 2
城市商旅 高雄駁二館
No. 83號, Gongyuan 2nd Rd, Yancheng District, Kaohsiung City, Taiwan 803


ホテルの部屋に入り、特に期待もせずカーテンを開けた、その瞬間――「わおっ」。完全に声が漏れました。

窓の向こうに広がっていたのは、高雄湾の夜景がこれでもかと詰め込まれた、映画のエンディングみたいな光景。水面に反射する光、静かに輝く街の輪郭、そのすべてが「今日の疲れ?知らんがな」と言わんばかりの迫力です。

正直、長旅の疲労はまだ体に残っていたはずでした。……が、この景色を見た瞬間、体感的にはHPが一気に全回復。さっきまで頭にあった「もう寝よう」という選択肢は、どこかへ強制デリートされました。

気づけば心は完全に夜モード。この景色を“眺めるだけ”で終わらせるのは無理、という結論に達し、私は吸い寄せられるように夜の街へ。こうして、高雄の夜はまだ終わらない。むしろ――ここからが第二ラウンドの始まりだったのです。


港のほうへ歩いていくと、ライトアップされた「大港橋」が視界に飛び込んできて、思わず足が止まりました。それはもう、息をのむほどの美しさ。闇の中に浮かび上がる光のラインが、静かに、しかし圧倒的な存在感を放っています。

実は私、夜景と橋が好きという、ややマニアックな嗜好を持っているのですが――その目線で見ても、この光景は完全に別格。「これは……ずっと見ていられるやつだ」と、心の中で即座に判定が下りました。

派手に主張するわけでもなく、ただそこに在るだけで視線を奪う感じ。まるで、推しがステージのセンターで静かに輝いている瞬間を、言葉もなく見つめてしまうあの感覚です。

気づけば、時間の感覚は消え、ただ黙って立ち尽くすだけ。大港橋は、高雄の夜にそっと置かれた“完成された一枚絵”のような存在でした。


港から振り返って街のほうを眺めると、その光景に自然と視線を奪われました。水面に映り込む無数の灯りが揺れ、まるで街そのものが静かに発光しているかのようです。

この夜の気温は30℃近く。正直、蒸し暑さは覚悟していました。ところが港を抜けてくる風は驚くほどやさしく、まとわりついていた不快感を一瞬でさらっていきます。

その風に身を任せていると、「……もう、ここにずっと居られるな」そんな危険な感想が、自然と頭に浮かびました。

涼しさと夜景に包まれ、時間の感覚がゆっくり溶けていく。暑さすら演出の一部だったと思わせるほど、この夜の高雄は、ただ静かに、そして心地よく、美しく輝いていたのです。



どうやらここは、カップル御用達の夜景スポットらしく、あたりを見渡せば視界に入るのは恋人同士ばかり。手をつなぎ、肩を寄せ合い、完璧な角度で夜景を背景に写真を撮る――そんなロマンチックな光景が、そこかしこに広がっていました。

その中で、ふと湧き上がる素朴な疑問。「……あれ? もしかして、このエリアを単独行動しているの、私だけでは?」

軽い違和感と、なぜか笑ってしまうような可笑しさ。とはいえ、不思議と居心地が悪いわけではありません。むしろこの静かな一人歩きが、高雄で迎えた初めての夜に、ちょうどいい余白を与えてくれているようでした。

こうして、高雄の夜は、無数のカップルのきらめきと、一人きりの静かな満足感を背景に、そっと幕を下ろしたのでした。

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