2025年11月19日水曜日

10/23/2025 台湾帰省旅行 七日目・九份老街、瑞芳、猴硐貓村 - Taiwan Homecoming Trip: Day 7 - Jiufen Old Street, Ruifang, and Houtong Cat Village

 

台湾滞在7日目。ここから物語は、台風フル稼働中の大逆転編に突入する。

「昨日がピークでしょ?」という希望的観測は、雨音とともに秒速で粉砕。空は本気、雨はドシャドシャ、風はビュンビュン。台風さん、まだ現役。むしろ絶好調。――と、その瞬間。脳内に電球がピカーン。

「この天気……観光地、ガラ空き説あるんじゃ?」

普通なら引き返す場面で、なぜか前進を選ぶ謎の判断力。冒険スイッチ、強制オン。
目指すは大人気スポット 九份&十分。いつもなら人・人・人で身動き不能なあの場所に、
台風を(半ば強引に)味方につけて突撃する無謀作戦だ。もちろん、旅には鉄の掟がある。予定通りに進んだら、それは旅じゃない。

嵐の中、電車は動くのか?バスは来るのか?そもそも人は無事に辿り着けるのか?

台風 vs 観光客ゼロ説。勝つのはどっちだ――。


まずは淡水駅から――「九份への壮大(になる予定の)旅」が、ひっそりと幕を開ける。

目指すは台湾交通のラスボス、台北車站。地下も地上も通路も無限に広がる、あの迷宮だ。
無事に到着できた時点で、すでに小さな勝利。

台北車站に着いたら、息つく間もなく地上へダッシュ。駅から歩いてすぐのバス乗り場が、次なる関門。そこで待ち受けているのが――九份行きの切り札、「Taiwan Tourist Shuttle 965」

これに乗れさえすれば、あとはバスに身を預けるだけで九份へ一直線!……のはずだった。



【事件発生】――早く着きすぎた。

時間に余裕を持って行動した結果、時刻表を見た瞬間に現実が殴りかかってくる。「……発車まで、めっちゃ時間あるやん。」

まさかの「待ち時間ミッション」強制発動。このまま台風直撃の雨風に打たれながら、バス停で人型オブジェと化すのか――。そのとき、救世主のように視界に入ってきたのがバス停の真正面にドンと構える建物。

「國立臺灣博物館 鐵道部園區」

調べてみると、日本統治時代に建てられた歴史的建造物が残る、想像以上に“渋い”スポットらしい。――というわけで即決。

「九份行きバス待ち」からの、 「歴史博物館ツアー」へ急カーブ。

完全に予定表に存在しない、想定外サイドクエスト突入。館内には貴重な展示がズラリ。気づけば、「ちょっと雨宿りのつもり」が「あれ、普通に勉強になるぞ?」に進化し、いつの間にか知識ゲージがじわじわ回復。

ただの待ち時間だったはずが、有意義すぎる寄り道イベントに昇格。

National Taiwan Museum Railway Department Park
國立臺灣博物館鐵道部園區
No. 2, Section 1, Yanping N Rd, Datong District, Taipei City, Taiwan 103


いざ、965バス出撃!博物館という想定外の寄り道クエストを無事クリアし、ついに本命ステージへ突入――「965バス、無事乗車ッ!!」

ここから約1時間半、九份までのロングドライブが始まる。座席に腰を下ろし、ひと息つきながら心の中でつぶやく。「よし、あとは乗ってるだけのイージーモードだな。」――その油断、秒で回収。

バスが川沿いに差しかかった瞬間、車窓いっぱいに広がった光景が、完全に想定外。

水位MAX、暴れ狂う濁流。

もはや“川”というより、「今にも何かを持っていきそうな自然の意志」。その迫力に、背中をゾワッと冷たいものが走る。「あ、これ…今回の台風、本気だわ。」観光バスに乗っているはずなのに、気分はなぜか災害ドキュメンタリーの現場レポーター。

果たしてこの965バス、嵐の中の山道を無事に駆け抜けられるのか――?九份への旅は、いつの間にか“観光”から“耐久イベント”へと姿を変えていた。


ついに到着ッ!!天空の街・九份、見参!

バスを降りた瞬間、視界が一気に開ける。見下ろせば――眼下にドーンと広がる、圧倒的スケールの景色。思わず口から漏れたのは、「……これ、ポストカードの中やん。」

写真で何百回も見たはずなのに、実物は別格。情報量が多すぎて、脳が一瞬フリーズする。もしこれが快晴だったら――美しさが限界突破して、感動のあまりその場で人生2周目に入っていた可能性すらある。

台風コンディションですらこの破壊力。晴れの日の九份がどれだけ危険な存在か、むしろ想像してはいけないやつだった。

それでも断言できる。この景色、圧倒的に、九份。



九份に到着して深呼吸ひとつ。そして、いよいよ本丸――「九份老街」の入口へ。そのアーチをくぐった、まさにその瞬間――世界、切り替わった。

体感的には、「現実世界」から「九份ワールド」へ瞬間転送。

外では台風が本気モードで雨を叩きつけているというのに、老街の中はまさかのフル稼働
細い路地には、人・人・人。そして両脇の店から溢れる灯りが、雨に濡れた石畳にキラキラ反射している。このコントラストがもう反則。嵐?関係ない。ここは今、九份。気づけばテンションは自動的に上限突破。心の中で静かに、しかし力強く宣言する。

「――九份探検クエスト、開始。」

もう後戻りはできない。この迷宮、最後まで味わい尽くすしかない。

ここが九份老街――まさかの徒歩オンリー縛りステージ

道はとにかく細い。もはや人間専用すきま通路。その両脇に、食べ物屋&土産屋がぎゅうぎゅう詰めで、誘惑レベルは常にMAX。しかも台風コンディションなのに、人・人・人。そして最大の敵は足元。石畳×急坂×雨=高難度すべり台。油断すれば即スライディング。

九份は、「絶景・グルメ・雨天アスレチック」全部盛りの観光地だった。

今や九份といえば、人!グルメ!インスタ!――の超人気観光地。……なんだけど。実はそのルーツ、めちゃくちゃ渋い。

九份はもともと、石炭で栄えたガチの鉱山タウン。観光途中でふらっと立ち寄った鉱山跡の入口で、空気が一瞬にして切り替わる。さっきまでお祭り騒ぎだった老街とは別世界。ここだけ、歴史スイッチON。

かつてこの場所で、石炭を求めて人が働き、町が熱気と夢で満ちていた――そんな過去が、静かに、でも重く迫ってくる。

九份は、ただの映えスポットじゃない。グルメを楽しみに来たはずが、気づけば歴史まで味わっていた。まさかの、深掘り系観光地だった。

鉱山入口のすぐそばには、かつて採掘した石炭を運ぶために使われていたという歴史的トンネルがドーンと残っていた。中を覗いた瞬間、思わず立ち止まる。

狭っ。

車一台がギリギリ通れるかどうかの幅。しかも照明ほぼゼロで、視界はガチ暗闇モード。壁も天井もゴツゴツ剥き出し。雰囲気は完全に「今にも崩れそうだけど、特に気にしないでね?」。観光地の延長線にあるとは思えない緊張感。これはもうトンネルというより、勇気を試される入口。

正直――怖すぎ。


あの炭鉱の入口とトンネル、実は九份のにぎやかな老街からけっこう歩いた先に、ポツンとある。つまり――そこそこ遠い。普通に疲れる。

そのおかげか、観光客の姿はほぼゼロ。さっきまでの人混みが嘘のように、あたりはシーン……。聞こえるのは、風の音と自分の足音だけ。空気もしっとり落ち着いていて、完全に別世界。ここは映えもBGMもないけれど、九份の“裏側”と“過去”に静かに向き合える場所。

にぎやかな老街の陰に隠れた、九份の穴場中の穴場。

九份をひと通り歩き回り、「いや〜満喫したわ!」と完全に勝者の顔で坂道を下っていた、その時。――脳内に緊急アラート。

「阿妹茶樓(あめいちゃろう)!!!」

そう、『千と千尋の神隠し』のモデルって噂の、あの超・有名スポット。まさかのスルー寸前。これはもう、「九份に来て阿妹茶樓を見ない=ラーメン頼んで麺だけ残す罪」レベルでアウト。

血の気が引く。全力で周囲を見渡すと、ちょうど日本人観光客を発見。心の中で土下座しつつ場所を尋ね、半ダッシュで突撃――

無事、阿妹茶樓に到着ッ!!

建物を目の前にした瞬間、「あ、これ絶対ネットで100回見たやつ。」感動、即・最大出力。

これで九份観光、コンプリート達成。満足度100%、悔いゼロ。

さぁ次のステージ、「十分」へGO——!!


次なるステージ「十分」へ向けて、意気揚々とバス停に到着。スマホ片手に運行スケジュールを確認――その瞬間、思考がフリーズ。

「次のバスまで……1時間半。」

いやいやいやいや。バスが来なきゃ移動不可。完全に足を封じられた状態異常。ここで取れる選択肢は、ひとつ。

「九份老街、まさかの逆戻り。」

さっきまで「満喫したわ!」とドヤ顔で締めた場所へ、何事もなかった顔で引き返す。こうして九份編は、予想外の延長戦に突入。

九份、まさかの2周目。果たしてこのまま、ちゃんと十分へ辿り着けるのか――?


時計をにらみ続けること、1時間半。風に打たれ、雨に濡れ、HPより先に心が削られていく。――そのとき。「え、あれ…?来た…?来たよね!?」視界の奥に現れたバス。乗り込んだ瞬間、もうそれだけでエア優勝。

こうしてバスは、ゴトゴトと山道を下っていき、たどり着いたのはふもとの町――「瑞芳(Ruifang)」

ここでバスとはお別れ。次なる移動手段は、電車

瑞芳 → レール → 十分。

ステージはついに、タイヤからレールへ切り替わる。今度こそスムーズに行くのか?それとも、まだ何か仕込まれているのか――?旅はまだ、油断させてくれない。

瑞芳駅に到着し、ついに念願の「平渓線っぽい電車」に乗車!「よし!あとはレールに身を任せるだけ!」肩の力も抜けて、完全に安心モード。――その瞬間。ふと目に入った行先表示。「ん?……十分じゃないやん!!!!

気づいた次の瞬間、反射神経だけで緊急ジャンプ退避。改札へ猛ダッシュし、駅員さんに直撃質問。「十分って、どう行けばいいですか!?」返ってきた答えは、あまりにもシンプルで残酷。「電車じゃ行けません。バスに乗ってください。」

……え?バス?Google Mapでは電車って言ってたけど?

「情報源:Google」vs「現場のプロ:駅員」

まさかの矛盾バトル勃発。理由は不明。台風による運休か、そもそもルート違いか――。ただ一つ、確かな事実がある。

今の俺、完全に迷子。

こうして、期待に満ちた“レール旅”は秒速で終了した。


駅員さんの「バスで行ってね」という神託を信じ、即・時刻表チェック。――その瞬間、思考停止。「次の十分行き……2時間半後。」長っ。しかも外はすでに夕暮れタイム突入。黄昏+台風+2時間半=「十分老街?無理ゲー確定。」

ここで潔く判断。目的地は断念し、プランB――瑞芳観光へシフトチェンジ。

……が。歩けど歩けど、なんもない。ネオンなし。人影なし。店、ほぼ閉店。田舎だからなのか、台風のせいなのか、その答えを知っているのは風だけ。

それでも一つだけ確かなことがある。瑞芳の町は、想像をはるかに超える静寂モードに突入していた。


観光的には、ほぼ息していない瑞芳の街。人、いない。店、暗い。活気、ゼロ。完全に詰んだ空気の中――駅前で、キラッと光る希望を発見。ミニ夜市。

規模は小さい。でも今の自分には、オアシス度120%。とりあえず腹ごしらえ。もち米の香りに心を救われつつ、スマホで現実逃避…じゃなく情報収集。

――そのとき、画面に現れた文字。「猴硐(ホウトン)……猫の村」……猫の村?しかもすぐ隣?今ここから行ける

その瞬間、十分ルート:完全封鎖。猫ルート:大開通。運命がドアをノックしてきた。答えは一択。

「行くしかないだろ!!!」

こうして旅は、想定外の大転換。次なる目的地は――「猴硐(ホウトン)」。まさかの“猫の村クエスト”、爆誕!!

さっきまで、十分にフラれてしょんぼりムードだった旅。しかし今回は――電車、普通に来た。普通に乗れた。普通に着いた。もはやそれだけで感動。ハードル、完全に地面スレスレ。

そして降り立った駅名は……「猴硐(ホウトン)」そう、噂の――猫の村ッ!!!

急きょ決まった目的地なのに、駅に降りた瞬間からテンション爆上がり。期待が胸の中で大暴れ。「どこ見ても猫!触れても猫!写真撮っても猫!」そんな理想郷が、この先に広がっている……はず!!

ついに降り立った、憧れの地――猫の聖域・ホウトン!

胸はワクワク、顔はニヤニヤ、テンションはすでに猫カフェ満席状態。……だった、その瞬間。周囲を見渡して、フリーズ。

暗っ。いや、マジで真っ暗。街灯どこ?ってレベルのブラックアウト級の闇

さらに追い打ち。人影ゼロ。気配ゼロ。まるで村全体がログアウトしたかのような静寂。「え、ここ猫の村だよね?猫どころか、人すらいないんだけど!?」想像してたのは、猫わんさか・ゴロゴロ・にゃーにゃーの楽園。現実は、ホラー映画の冒頭5分

さっきまでテンションMAXだった自分に、そっと声をかけたい。「落ち着け。ここ、想像とだいぶ違うぞ。」猫はどこだ!?この村、生きてるのか!?そして私の期待は、ちゃんと報われるのか――!?

真っ暗なホウトンの村を歩き回りながら、心のどこかでこう思っていた。「大丈夫、大通りに行けば賑わってるはず!」しかし——進めど進めど、シーーーーーン。聞こえるのは自分の足音と風の音だけ。

そんな中、ふと視界の端に動く影。猫。また歩くと——猫。さらに別の角を曲がると——猫。「猫はいる!!!!」しかし!!!!!店は全部死んでいる!!!!観光施設、閉店。お土産屋、閉店。飲食店、閉店。村のテンション、限りなく0。調べた結果、どうやら台風のせいで観光客がほぼ来なかったため、村ごと全店オフライン。

かつてSNSで見た猫×観光客×ワイワイな“猫の街”のイメージはどこへ。期待はズタズタ、でも心の中でひとこと。「今日は猫より静けさに癒されたわ……」


誰もいないホウトンの村をあとにして、そっと台北へ戻ることにした。人も店も灯りもない猫の村。まるでエンディング後のステージのような静けさの中で、今日一日の出来事がじわっと頭に浮かぶ。

予定では――九份 → 十分のはずだった。蓋を開けてみれば――九份2周 → 瑞芳静けさ → 猫村ホラー。もはや台本を書いたのは台風。しかし振り返ってみると、全部、“悪天候だからこそ出現したレア体験”。思い通りにいかない。

でもそれこそ旅の醍醐味であり、スパイスであり、「予定通り」が負け、「予想外」が勝つ日もある。そして不思議なことに、胸の奥にひとつの新しい感情が生まれていた。「次こそ晴れの日に、もう一度来たい。」そう思えた時点で、今日の旅はすでに成功だったのかもしれない。

結論——この一日、“十分”以上に価値あった。

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