2025年11月18日火曜日

10/22/2025 台湾帰省旅行 六日目・台風通過 - Taiwan Homecoming Trip: Day Six - Typhoon Passing Through

 

台湾6日目。窓を開けて外を見た瞬間、思わず本音が漏れた。「……え、ここ台北?それともウォーターパーク?」

台風は遠慮という言葉を完全に忘れ、絶賛フルスロットル。風はビュンビュン、雨はバシャバシャ。視界の端では看板が倒れ、「今日は大人しくしとけよ」と全力で警告してくる。これを見た瞬間、判断は一瞬だった。

――今日は外出したらダメな日だ。

無理は禁物。勇気ある撤退こそ、旅上級者の選択である。こうして、せっかくの旅行にもかかわらず、まさかの自室ステイ確定。外では台風が大暴れしているが、部屋の中ではこちらも負けていない。発動したのは、“静寂という名の引きこもり”。

朝ごはんは、昨日のうちに確保しておいた 粽子(ちまき)。外では台風が本気を出しすぎて、風と雨が合体し、もはや世界がドラム式洗濯機に放り込まれている状態だというのに――家の中では静かに、「モーニングちまき会」が開幕した。

ひと口、パクッ。……え?うっま。

驚きのあまり、台風の突風よりも速いスピードで二口目に突入。もはや迷いはない。この瞬間、確信した。「台湾、ご飯ガチャSSR率、体感100%。」

嵐に閉じ込められた朝に、まさかの大当たりちまき。“外は大荒れ、心はほっこり”という、あまりにもシュールで、しかし最高に台湾らしい朝が、こうして静かに(胃袋だけは騒がしく)始まったのであった。

今日は完全に「何もしない・大人しくする日」の予定だった。予定ゼロ、行動力ゼロ、やる気は雲より高く飛んでいって行方不明。体はベッド、心は省エネモードである。……が、念のため近所の市役所に電話してみた。返ってきた答えは、まさかの一言。

「通常どおり開いております!」

え、強すぎない?外は完全に「台風 vs 地球」の最終決戦フェーズなんですけど?

その瞬間、頭の中で鳴り響くミッション開始BGM。「用事を片付けろ」

さっきまで“ゴロゴロ至上主義”だった私に、まさかの出動要請がかかる。完全静止モードから、強制的にアクティブへ。セーブ不可、リトライ不可。

こうして、「今日は絶対に動かない日」のはずが、気づけば台風の中、市役所へ向かうルートが確定。これはもう自由意思ではない。強制クエスト発生。

市役所に到着してみたら――ガラ〜ン。人がいなさすぎて、思わず心の中で確認する。
「……え? 今日、私が市長?」そんな錯覚を起こすレベルの完全貸し切り状態だった。

足音がやたらと響く館内は、BGMよりも静か。体感的には「図書館以上、無人島未満」。外では台風が大暴れしているというのに、ここだけ時空が切り離されている。

そのせいか、職員さんたちの対応がもう異常にやさしい。丁寧、親切、フルサービスの三拍子。こちらが何か言う前に先回りしてくれる感じで、なぜか一日一組限定VIPみたいな扱いを受ける。――ところが、手続きも終盤に差しかかったその時、事件は起きた。

机の上に現れたのは、中国語入力用キーボード。……あ、無理。理解度ゼロ。画面の前で完全フリーズ。館内で一番静止しているのが、まさかの私だった。

するとそれを察した職員さんが、すっと寄ってきて、「大丈夫ですよ」と言わんばかりに代打入力。あまりにも自然で優しい介入に、心の中で拍手が鳴り止まない。おかげで手続きは驚くほどスムーズに完了。

結論——外は嵐、館内は静寂、対応は神、そして心はほっこり。台風の日の市役所、想像以上に平和だった。

市役所ミッションを無事に、しかも華麗にクリアし、「よし、あとは帰るだけ!」と勝利の余韻に浸りながら出口へ――……その途中、ふとトイレに立ち寄ったのが運の尽きだった。

そこに鎮座していたのは、まさかの和式トイレ。

思わず二度見。いや、確認のために三度見。脳内では警報が鳴り響く。「……タイムスリップ装置、ここにあった。」

最後に遭遇したのはいつだろう。記憶をたどっても、もはや年代が曖昧になるレベルの懐かしさ。一瞬だけ、自分に問いかけてみる。「……チャレンジ、する?」しかし即座に現実が追いつく。膝への信頼度:ゼロ。姿勢の安定感:ゼロ。成功率:限りなくゼロ。

脳内シミュレーションを高速で回した結果、導き出された結論はひとつ。「今回は撤退が最適解。」

というわけで、何事もなかったかのように静かに退室。用は足していないが、妙な達成感と動揺だけはしっかり持ち帰ることになった。


帰る前、時差ボケが限界突破し、体内時計は完全にクラッシュ。脳は台湾、体はベッド、そして胃袋だけがリアルタイムNY時間で稼働中というカオス状態だった。

そんな中、唐突に鳴り響く内部アラート。「……ご飯くれ。」しかもタイミングは絶妙に中途半端。今さら重いものは微妙、でも空腹はガチ。どうする、俺。そのとき視界にスッと現れた文字——サイゼリヤ。日本ではおなじみらしいが、私にとっては完全なる初対面、新キャラ参戦である。

「安いって噂は聞いたことあるし…まあ、軽くね?」と、余裕ぶって入店。完全になめていた。そして料理を一口。…………え?うまッッ!!!

脳が一瞬フリーズ。外は台風で暴風雨、世界は荒れているのに、口の中だけ突然イタリアの快晴。オリーブ畑と青空が見えるレベル。

その瞬間、心の声が全力で叫ぶ。「この値段、バグってない???」コスパの概念が音を立てて崩壊し、満足度ゲージは一気にMAXへ。まさか台湾旅行の終盤、しかも台風の日に、初サイゼリヤで感動イベントが発生するとは夢にも思わなかった。

予想外の伏兵、強すぎる性能。
サイゼ、恐るべし。

マンションに戻り、「Free Wi-Fiあるし今夜は仕事だ!」とやる気満々でPCを起動。……が、現実は残酷だった。ページは開かない。永遠に開かない。

回線速度は牛どころかカタツムリが休憩しながら進むレベル。動画は夢、メールは幻。もはや「インターネット(仮)」である。他に手段もなく、選択肢はただ一つ。

低速を受け入れ、心を無にする。

クリック → 待つ。
クリック → 瞑想。

外は台風ビュンビュン、部屋はWi-Fiトロトロ。こうして私は「外出禁止」と「仕事禁止」を同時にくらい、待つことだけに全振りした一日を静かに終えたのであった。

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