2025年2月21日金曜日

世界遺産:ミストラス(Mystras)ー ギリシャ

ミストラス(Mystras)

ミストラス(Mystras, Μυστράς)は、ギリシャ南部ペロポネソス半島にある中世のビザンティン帝国の要塞都市遺跡 で、13世紀に建設されました。14世紀にはビザンティン帝国の有力な政治・文化の中心地 となり、ルネサンス期の思想や芸術にも影響を与えました。1989年にユネスコ世界遺産(文化遺産) に登録されました。

歴史

  • 1249年:フランスのラテン帝国支配下で、ウィリアム2世・ド・ヴィルアルドゥアン によって要塞として建設。
  • 1262年:ビザンティン帝国(パレオロゴス朝)の支配下に入り、ギリシャ正教会の文化・宗教の中心地となる。
  • 14世紀モレアス専制公国(ビザンティン帝国の属国) の首都として繁栄。
  • 1460年:オスマン帝国に占領されるが、ギリシャ文化の中心地として存続。
  • 19世紀:ギリシャ独立戦争後に衰退し、廃墟となる。

ペリヴレプトス修道院(Monastery of Peribleptos)

特徴

  1. ビザンティン帝国の要塞都市

    • 山の斜面に築かれた城壁都市 で、防衛機能を持つ。
    • 宮殿、修道院、教会、住宅跡が残り、中世ギリシャの都市構造を今に伝える。
  2. ビザンティン美術の傑作

    • ペリヴレプトス修道院(Monastery of Peribleptos):内部には14世紀のフレスコ画が残る。
    • アギオス・ディミトリオス教会(Metropolis of Mystras):14世紀に建立され、ビザンティン皇帝コンスタンティノス11世が戴冠した場所。
    • パンタナサ修道院(Pantanassa Monastery):現在も修道女が暮らし、修道院として機能している。
  3. ギリシャ文化とルネサンスへの影響

    • ギリシャ哲学者ゲミストス・プレトン がここで活動し、西欧ルネサンスに影響を与えた。
    • ビザンティン帝国末期の知的・文化的中心地となり、多くの学者や芸術家が集まった。

アギオス・ディミトリオス教会(Metropolis of Mystras)

現在の状況

  • 遺跡は観光地として整備され、教会や宮殿は修復されている。
  • ビザンティン芸術や歴史に関心がある人々にとって重要な訪問地。
  • パンタナサ修道院は現在も宗教施設として使用されている。

アクセス

  • 所在地:ギリシャ・ペロポネソス半島(スパルタの近郊)
  • 最寄り都市:スパルタから車で約10分
  • 入場料:大人約12ユーロ

パンタナサ修道院(Pantanassa Monastery)

まとめ

ミストラスは、ビザンティン帝国末期の文化と建築が色濃く残る要塞都市遺跡 であり、中世ギリシャの歴史と芸術の発展を象徴する場所です。ビザンティン建築の教会や修道院が点在し、西欧ルネサンスにも影響を与えた知的拠点としての役割も果たしました。現在も遺跡の保存が進められ、ギリシャの重要な歴史遺産のひとつとなっています。

世界遺産:ズバラ考古遺跡(Zubarah Archaeological Site)ー カタール

ズバラ砦(Zubarah Fort)

ズバラ(Zubarah)は、カタール北西部にある18世紀の商業都市の遺跡 であり、かつてペルシャ湾交易の中心地 として栄えました。交易、真珠採取、漁業で繁栄しましたが、19世紀には衰退しました。2013年にユネスコ世界遺産(文化遺産) に登録され、現在も発掘・保存作業が進められています。

歴史

  • 18世紀後半:アラブ商人がズバラを建設し、交易都市として発展。
  • 19世紀初頭:オマーンやペルシャ(現在のイラン)との貿易拠点となる。
  • 19世紀後半:戦争や紛争の影響で衰退し、放棄される。
  • 20世紀以降:遺跡の発掘が進み、歴史的価値が再評価される。

特徴

  1. 交易都市としての遺跡群

    • 城壁に囲まれた都市跡 が発掘され、住居、商業施設、モスク、港湾施設が確認されている。
    • 真珠採取と交易の拠点 であり、ペルシャ湾交易の重要な拠点であったことがわかる。
  2. ズバラ砦(Zubarah Fort)

    • 1938年にカタール政府によって建設された砦 で、現在は考古学博物館として公開。
    • 遺跡の保存と監視のために建てられたが、現在は観光名所となっている。
  3. 発掘による新たな発見

    • 家屋や貯水槽、交易所、モスク などが発掘され、当時の都市生活の様子が明らかになっている。
    • ペルシャ湾沿岸地域の交易ネットワークの一端を示す貴重な資料が見つかっている。

現在の状況

  • 遺跡は観光地として整備されており、ズバラ砦を中心に見学可能。
  • 発掘作業が続けられており、遺跡の全容が明らかになりつつある。
  • 厳しい砂漠環境の中で遺跡保存が進められている。

アクセス

  • 所在地:カタール北西部(ドーハから約105km)
  • 最寄り都市:ドーハ(車で約1時間半)
  • 入場料:無料

まとめ

ズバラは、18世紀のペルシャ湾交易の中心地として栄えた都市の遺跡 であり、当時の交易・真珠採取文化を示す貴重な世界遺産です。現在も発掘・研究が進められており、アラブ湾岸地域の歴史を知る上で重要な場所となっています。




世界遺産:ペルセポリス(Persepolis)ー イラン

ペルセポリス(Persepolis)

ペルセポリス(Persepolis, تخت جمشید)は、イラン南部にあるアケメネス朝ペルシア(紀元前6世紀~4世紀)の首都の一つ で、紀元前518年頃にダレイオス1世によって建設されました。ペルシア帝国の壮麗な宮殿都市 であり、精巧な彫刻や建築が特徴です。1979年にユネスコ世界遺産(文化遺産) に登録されました。

歴史

  • 紀元前518年:アケメネス朝の王ダレイオス1世が宮殿都市として建設開始。
  • 紀元前486年~330年:クセルクセス1世やアルタクセルクセス1世が拡張し、帝国の中心となる。
  • 紀元前330年:アレクサンドロス大王によって征服され、宮殿が焼き払われる。
  • 20世紀以降:発掘が進み、ペルシア帝国の遺産として世界的に評価される。

アパダーナ宮殿(Apadana Palace)

特徴

  1. 広大な宮殿跡と壮麗な建築

    • アパダーナ宮殿(Apadana Palace):ダレイオス1世が建設した壮大な謁見の間。
    • 百柱の間(Hall of Hundred Columns):王の謁見や儀式が行われた大広間。
    • クセルクセスの門(Gate of All Nations):ペルシア帝国の多民族国家を象徴する玄関口。
  2. 精巧なレリーフと芸術

    • 宮殿の壁面には、ペルシア帝国に属する民族が貢物を捧げる様子 が精巧に刻まれている。
    • ライオンと牡牛の戦いの彫刻 は、力と権威を象徴する代表的なレリーフ。
  3. アケメネス朝の権力と多文化性

    • 帝国はエジプト、バビロニア、ギリシャ、インドなど広範囲にわたり、多文化が融合した建築・芸術が特徴。
    • 各地の職人が集められ、異なる文化の要素が宮殿のデザインに組み込まれている。
  4. 破壊と再評価

    • アレクサンドロス大王による破壊後、長らく廃墟となる。
    • 20世紀に本格的な発掘が行われ、世界遺産として認識される。

百柱の間(Hall of Hundred Columns)

現在の状況

  • 観光地として整備され、多くの旅行者が訪れる。
  • 遺跡の風化が進行中 で、保存活動が求められている。
  • 政治・宗教的な要因により、遺跡の保護に課題がある(過去には破壊の危機も)。

アクセス

  • 所在地:イラン・ファールス州(シーラーズの北東約60km)
  • 最寄り都市:シーラーズ(Shiraz)から車で約1時間
  • 入場料:約5~10米ドル(外国人向け料金)

クセルクセスの門(Gate of All Nations)

まとめ

ペルセポリスは、アケメネス朝ペルシアの栄華を象徴する壮麗な宮殿都市 であり、その建築とレリーフは当時の権力と多文化共存の歴史を今に伝えています。アレクサンドロス大王による破壊後もその遺産は生き続け、現在は世界的に重要な考古学遺跡として保存・研究が進められています。