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パルミラ(Palmyra) |
パルミラ(Palmyra)は、シリア中部の砂漠にある古代都市遺跡で、古代ローマ帝国とペルシャ、アラビア世界をつなぐ交易の十字路として繁栄しました。
紀元前1世紀から3世紀にかけて最盛期を迎え、東西文化の融合が見られる建築・芸術の宝庫として知られています。
**1980年にユネスコ世界遺産(文化遺産)**に登録されましたが、近年の内戦により一部が破壊され、2013年から「危機にさらされている世界遺産」リストに登録されています。
歴史
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紀元前2千年紀頃:オアシス都市として発展の兆しを見せる。
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紀元前1世紀頃:ローマの属州となり、隊商交易の拠点として急速に発展。
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3世紀:女王ゼノビアがパルミラ王国を建て、ローマに一時対抗。のちにローマに制圧され衰退。
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6世紀以降:ビザンティン、イスラム、オスマン帝国などの支配を経るが、都市としての機能は失われる。
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バール神殿(Temple of Bel) |
特徴と主な遺構
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バール神殿(Temple of Bel)
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パルミラ最大の宗教建築で、セム系神バールを祀る神殿。
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ギリシャ・ローマ建築とオリエント風装飾が融合したデザイン。
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2015年、過激派によって大部分が破壊される。
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列柱道路(Colonnaded Street)
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全長約1.1kmに及ぶ壮大な石柱通り。都市の中心を貫く。
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両側には公共施設や商店、神殿が並んでいた。
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凱旋門(Monumental Arch)
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2世紀頃に建てられた壮麗なアーチ。都市への入口に位置。
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一部破壊され、現在は復元が進められている。
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円形劇場(Roman Theatre)
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約5000人を収容できたローマ式の劇場。舞台や座席がほぼ原形をとどめていたが、近年損傷。
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一時期、武装組織によって公開処刑の場として利用されるという悲劇もあった。
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墓塔群(Tower Tombs)
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砂漠の周囲に林立する高さ数十メートルの石造墓塔。
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壁画や彫刻が施され、パルミラ独自の葬送文化を示す。
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円形劇場(Roman Theatre) |
文化的意義
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ギリシャ・ローマ、ペルシャ、メソポタミア、アラブ文化の融合
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シルクロードの西の玄関口としての役割
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美術、建築、宗教が交差した世界的に稀有な都市文明
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列柱道路(Colonnaded Street) |
現在の状況と課題
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2015〜2017年にかけて、過激派組織によって複数の遺跡が爆破・破壊されました。
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現在はシリア政府の管理下に戻っていますが、復旧と保全は進行中かつ困難な状況。
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国際機関とシリア文化財局の連携により、3Dデータや石材の再利用による修復プロジェクトが進められています。
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観光は安全面の理由で制限的。
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墓塔群(Tower Tombs) |
アクセス(平時)
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所在地:シリア・ホムス県
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最寄り都市:ホムスまたはダマスカスから車で数時間(約220km)
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※治安状況により訪問は極めて困難
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凱旋門(Monumental Arch)- Destory by ISIS |
まとめ
パルミラは、古代東西交易の交差点として繁栄し、多文化が融合した壮大な都市遺跡です。
美しい列柱や神殿、劇場、墓塔が語る古代の栄光は、過去の栄華と現代の破壊の両方を象徴しています。今後の修復と平和の再来が、世界の文化遺産の希望となることが期待されている、極めて重要な世界遺産です。
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