レッド・ベイは、カナダ・ニューファンドランドおよびラブラドール州にある16世紀のバスク人による捕鯨基地の遺跡で、ヨーロッパ人によるアメリカ大陸で最も古い産業活動のひとつを今に伝えています。
スペイン北部から渡ってきたバスク人がこの地で捕鯨を行い、鯨油をヨーロッパに輸出する拠点として使っていました。
**2013年にユネスコ世界遺産(文化遺産)**に登録されました。

歴史的背景
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1530年代〜17世紀初頭:スペイン(特にバスク地方)からの捕鯨者たちが、大西洋を越えてレッド・ベイに到達。
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レッド・ベイは北大西洋のセミクジラの重要な捕獲地であり、最盛期には数百人規模の捕鯨隊が活動していた。
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捕獲したクジラの油は、ランプ用燃料などとしてヨーロッパ市場で高価で取引されていた。
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捕鯨基地にはレンダリング工場(鯨油抽出所)、倉庫、船着き場、墓地などが整備されていた。
主な構成要素と特徴
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捕鯨施設跡
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クジラを解体し、油を精製した炉や作業場の跡が残る。
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保存状態が良好で、当時の技術や労働の実態がわかる。
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沈没船(サン・ファン号など)
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沖合からは、**バスク人の捕鯨船が難破した痕跡(木造船の沈没遺構)**も見つかっており、現在は水中考古学の貴重な研究対象となっている。
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サン・ファン号(1565年沈没)は、当時の造船技術を伝える重要な資料。
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墓地と生活跡
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捕鯨作業員の墓や、生活に使われた道具、衣服の遺物などが発掘されている。
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病気や労働事故で命を落とした人々が眠る墓地も、歴史の証しとなっている。
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世界遺産としての価値
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新世界(アメリカ大陸)における初期の大規模な産業活動の証拠
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16世紀の捕鯨技術、貿易ネットワーク、航海技術の実態を明らかにする考古学的価値
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先住民との接触やヨーロッパ人の定住以前の経済活動を示す稀有な例
現在の保存・展示
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遺跡はカナダ政府によって保護されており、**「レッド・ベイ国定史跡(Red Bay National Historic Site)」**として整備。
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現地にはビジターセンターがあり、出土品の展示、水中考古学の成果、捕鯨生活の様子などを学ぶことができる。
アクセス
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所在地:カナダ・ラブラドール半島南岸の小さな町レッド・ベイ
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最寄りの大都市:ニューファンドランド島からフェリーや飛行機でアクセス
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現地は人口数百人の小さな町で、夏季に観光客が多く訪れる
まとめ
レッド・ベイは、16世紀にヨーロッパの捕鯨船団が新世界に築いた先駆的な産業拠点の遺跡であり、大航海時代の経済活動の具体的な証拠を残す貴重な世界遺産です。
この静かな漁村に残る歴史は、自然資源の利用、航海技術、そして人々の営みの記憶を今に伝えています。
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