2025年3月19日水曜日

世界遺産:イランのアルメニア修道院群(Armenian Monastic Ensembles of Iran)ー イラン

イランのアルメニア修道院群(Armenian Monastic Ensembles of Iran)

イランのアルメニア修道院群(Armenian Monastic Ensembles of Iran)は、イラン北西部にある3つのアルメニア正教会の修道院で、アルメニアの文化とキリスト教の信仰を象徴する遺産 です。これらの修道院は、アルメニアとペルシャ文化が融合した独自の建築様式を持ち、長年にわたってアルメニア人コミュニティの精神的な中心地となってきました。2008年にユネスコ世界遺産(文化遺産) に登録されました。


構成遺産

この遺産群は、以下の3つの主要な修道院で構成されています。

1. 聖タデウス修道院(St. Thaddeus Monastery, Qareh Klisa / Kara Kelisa)

  • イラン最古のキリスト教修道院の一つで、アルメニア使徒教会の重要な聖地。
  • 創建は伝承では1世紀とされ、現在の建物は10世紀以降に再建されたもの。
  • 黒と白の石で装飾された美しい教会で、「カラ・ケリサ(黒い教会)」とも呼ばれる。
  • 毎年7月には、アルメニア人の巡礼祭が行われる。

2. 聖ステパノス修道院(St. Stepanos Monastery)

  • アルメニア正教会の修道院で、9世紀~17世紀にかけて拡張。
  • ザグロス山脈の渓谷に囲まれた壮大な景観の中に位置する。
  • ペルシャ、ビザンティン、アルメニアの建築様式が融合したデザインが特徴。

3. ザーラ修道院(Chapel of Dzordzor)

  • 14世紀に建設された小さな礼拝堂で、湖の近くに位置。
  • ダム建設により水没の危機に直面し、1987年に高台へ移設された。

歴史

  • 1~4世紀:アルメニア人がこの地域にキリスト教を広め、修道院が設立される。
  • 7~17世紀:アラブ、セルジューク、モンゴル、オスマン帝国の影響を受けながらも修道院は存続。
  • 20世紀以降:アルメニア人の人口が減少するが、修道院は巡礼地として維持。
  • 2008年:ユネスコ世界遺産に登録。

聖タデウス修道院(St. Thaddeus Monastery, Qareh Klisa / Kara Kelisa)

特徴

  1. アルメニアとペルシャ文化の融合

    • アルメニア正教会の伝統を継ぐが、ペルシャ建築の影響も見られる。
    • 石造りの細かい装飾や、ドーム型の屋根が特徴的。
  2. イラン国内のキリスト教遺産

    • イランでは珍しいキリスト教建築群の一つ。
    • イスラム世界の中でキリスト教文化が残る貴重な遺産。
  3. 巡礼地としての重要性

    • 毎年アルメニア人やイランのキリスト教徒が巡礼に訪れる。
    • 聖タデウス祭は、アルメニア人にとって特に重要な宗教行事。

聖ステパノス修道院(St. Stepanos Monastery)

現在の状況

  • イラン政府とアルメニア正教会が協力し、修道院の保存・修復を進めている。
  • 巡礼者や観光客が訪れるが、アクセスはやや困難。
  • 宗教行事の際には、特別な礼拝や祭典が行われる。

アクセス

  • 所在地:イラン北西部(アゼルバイジャン州・西アゼルバイジャン州)
  • 最寄り都市:タブリーズ(車で約3~5時間)
  • 入場料:修道院ごとに異なる(巡礼時は無料)

ザーラ修道院(Chapel of Dzordzor)
まとめ

イランのアルメニア修道院群は、キリスト教とペルシャ文化が融合した独特の宗教建築であり、アルメニア人の精神的な拠点として歴史的にも重要な役割を果たしてきた世界遺産 です。現在も巡礼地としての価値を持ち、文化・宗教の多様性を示す貴重な遺産となっています。


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