2025年3月5日水曜日

世界遺産:古代都市ボスラ(Ancient City of Bosra)ー シリア

古代都市ボスラ(Ancient City of Bosra)

古代都市ボスラ(Ancient City of Bosra, بُصْرَى‎)は、シリア南部にあるローマ時代の遺跡群を中心とした歴史的な都市 で、ナバテア王国、ローマ帝国、ビザンツ帝国、イスラム帝国といった様々な文明が交差してきました。特に、保存状態の良いローマ劇場や遺跡群が特徴的です。1980年にユネスコ世界遺産(文化遺産) に登録されましたが、現在はシリア内戦の影響で「危機遺産リスト」にも登録されています。

歴史

  • 紀元前2世紀:ナバテア王国の重要都市として発展。
  • 紀元106年:ローマ帝国がナバテア王国を征服し、ボスラはローマの属州アラビアの首都となる。
  • 3~6世紀:ビザンツ帝国の支配下でキリスト教の重要都市となる。
  • 7世紀以降:イスラム帝国の支配下に入り、シリア地方の商業・宗教の中心地として栄える。
  • 20世紀:フランス統治を経て、独立後のシリアの歴史遺産として保護される。

特徴

  1. 保存状態の良いローマ劇場

    • 紀元2世紀に建設された、ローマ帝国時代の円形劇場。
    • 約15,000人を収容できる大規模な構造で、ローマ劇場としては最も保存状態が良いものの一つ。
    • 後の時代に要塞化され、厚い城壁が追加されたため、現在もほぼ完全な形で残っている。
  2. ナバテア・ローマ・ビザンツ・イスラム文化の融合

    • ローマ時代の浴場、凱旋門、市場などの遺構が多数残る。
    • ビザンツ時代のキリスト教会や修道院も発見されている。
    • ウマイヤ朝時代以降のモスクやイスラム建築が融合し、多様な文化の歴史を伝えている。
  3. シルクロードの要衝

    • 古代ボスラは、シルクロードの重要な交易拠点として発展し、キャラバンサライ(隊商宿)が設置されていた。
    • 東西交易の要として、インド・アラビア・ヨーロッパを結ぶ物流の中心となった。
  4. イスラム世界との関わり

    • 伝説によれば、預言者ムハンマドが青年時代にボスラを訪れ、キリスト教の修道士バヒラから「預言者になる」と告げられた とされる。
    • イスラム時代には要塞都市として改築され、モスクが建設された。

現在の状況

  • シリア内戦の影響で、遺跡の一部が破壊され、保存状態が危機にさらされている。
  • ユネスコの「危機遺産リスト」に登録され、国際的な保護と復興の必要性が高まっている。
  • 一部地域は観光地として開放されているが、情勢によって訪問は制限されることがある。

アクセス

  • 所在地:シリア・ダルアー県ボスラ
  • 最寄り都市:ダマスカス(車で約2時間)
  • 入場料:通常は有料だが、現在の状況により変更の可能性あり

まとめ

古代都市ボスラは、ナバテア・ローマ・ビザンツ・イスラムと様々な文明の遺産が融合した歴史的都市で、特に保存状態の良いローマ劇場が世界的に有名 です。現在はシリア内戦の影響で「危機遺産」となっていますが、歴史的価値が高く、今後の復興と保護が期待されています。


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