2025年3月26日水曜日

世界遺産:バールベック(Baalbek)ー レバノン

バッカス神殿(Temple of Bacchus)

バールベックは、レバノン東部のベカー高原に位置する古代ローマ時代の神殿都市の遺跡です。かつては古代フェニキア人によって信仰されていた太陽神崇拝の地であり、ローマ時代にはユピテル、バッカス、ウェヌスなどの神々を祀る巨大な神殿群が建てられました。その壮大さと保存状態の良さから「中東のローマ」とも称され、**1984年にユネスコ世界遺産(文化遺産)**に登録されました。


歴史

  • フェニキア時代:太陽神「バアル」の聖地として信仰され、「バアルベック(バアルの町)」と呼ばれる。

  • 紀元前64年:ローマ帝国がこの地を征服し、都市整備と神殿建設を本格化。

  • 1世紀~3世紀:ユピテル神殿、バッカス神殿、ウェヌス神殿などの壮大な宗教建築が完成。

  • 7世紀以降:ビザンツ帝国、イスラム勢力、オスマン帝国の支配下で変遷。

  • 近代:地震や戦争によって一部損壊するも、発掘と保存活動が進められる。


ユピテル神殿(Temple of Jupiter)

主な見どころ

  1. ユピテル神殿(Temple of Jupiter)

    • 古代ローマ世界でも最大級の神殿。

    • 現存する6本の巨大なコリント式柱(高さ20m)が象徴的。

    • 建材として使われた石は、**「動かせない石(Stone of the Pregnant Woman)」**として有名な超巨大石(推定1000トン超)も含まれる。

  2. バッカス神殿(Temple of Bacchus)

    • ワインと豊穣の神バッカスに捧げられた神殿。

    • 完全に近い形で残っており、内部の浮彫や柱装飾が非常に精巧

    • 保存状態が非常によく、ローマ建築の傑作とされている。

  3. ウェヌス神殿(Temple of Venus)

    • 愛と美の女神ウェヌスを祀った小規模な円形神殿。

    • 彫刻や柱の曲線美が繊細でエレガント。

  4. ヘリオポリス(都市全体)

    • ローマ時代、この地は「ヘリオポリス(太陽の都市)」と呼ばれていた。

    • 街全体が神殿群とともに宗教都市として機能していた。


ウェヌス神殿(Temple of Venus)

現在の状況

  • 一部損壊があるものの、バッカス神殿などは非常に良好な保存状態。

  • 毎年、音楽フェスティバル「バールベック国際フェスティバル」が開催され、文化の発信地でもある。

  • 政情不安の影響を受けながらも、観光地として根強い人気を誇る。


アクセス

  • 所在地:レバノン共和国、ベカー高原(ベイルートから東へ約85km)

  • 最寄り都市:ザーレーまたはベイルート

  • アクセス方法:ベイルートから車で約2〜3時間


バールベック国際フェスティバル

まとめ

バールベックは、古代ローマ建築の極致とされる壮大な神殿群を今に伝える中東の宝です。
そのスケール、技術、芸術性は、現代においても人々に驚きと感動を与えます。宗教、文化、建築の交差点として、歴史的・美術的価値の非常に高い世界遺産です。


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