ジャームのミナレット(Minaret of Jam, منار جام)は、アフガニスタン西部のゴール州 に位置する高さ約 65メートル の壮大な石造りの塔です。12世紀末に ゴール朝(Ghurid dynasty) によって建設され、精巧な装飾と優れた建築技術を誇るイスラム建築の傑作とされています。2002年にユネスコ世界遺産(文化遺産) に登録されましたが、風化や洪水、戦争の影響で、危機遺産リスト にも掲載されています。
歴史
- 12世紀後半(1174年〜1202年):ゴール朝のスルタン・ギヤースッディーン・ムハンマド(Ghiyas-ud-Din Muhammad)によって建設。
- 13世紀以降:ゴール朝が衰退し、ミナレット周辺の都市も廃墟化。
- 19世紀:イギリスの探検家によって再発見される。
- 20世紀後半:アフガニスタンの政情不安により保護活動が困難に。
- 2002年:ユネスコ世界遺産に登録されるが、崩壊の危機に瀕しているため危機遺産リスト にも登録。
特徴
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高度な建築技術とデザイン
- 高さ約65メートル で、12世紀のミナレットとしては異例の規模。
- 焼成レンガ で作られ、幾何学模様、アラビア語のカリグラフィー、クルアーンの碑文が刻まれている。
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精巧な装飾
- イスラム美術の特徴である アラベスク(幾何学模様) が施されている。
- クフィー体(Kufic script)やナスフ体(Naskh script)で刻まれた碑文が、ゴール朝の繁栄を物語る。
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ゴール朝の文化の象徴
- ゴール朝は、ペルシャ文化とイスラム文化を融合した王朝であり、その建築技術がこのミナレットに集約されている。
- デリーのクトゥブ・ミナール(インド) にも影響を与えたとされる。
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孤立した立地
- 山岳地帯の川沿い に建てられており、なぜこの場所に建設されたのかは謎とされている。
- 周辺にはかつての都市遺跡が埋もれている可能性がある。
現在の状況
- 洪水、地震、風化による崩壊の危機
- アフガニスタンの政情不安 により、本格的な保護活動が困難。
- 観光は非常に困難(アクセスが悪く、安全面の問題あり)。
アクセス
- 所在地:アフガニスタン西部ゴール州、ハリル川沿い
- 最寄り都市:ヘラートまたはカブール(ただし、道路状況は非常に悪い)
- 入場料:なし(現在、観光は推奨されていない)
まとめ
ジャームのミナレットは、ゴール朝の建築技術と美学を象徴する貴重な遺産であり、イスラム建築の傑作の一つです。しかし、その立地や政情の影響により保護活動が困難であり、危機遺産として登録されています。アクセスが難しいものの、歴史的価値の高い遺跡として今後の保存が期待されています。
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